コーナリングでアホみたいに寝かせて走るバイクがコケない理由
こんにちは、閲覧いただきありがとうございます。
今回は、コーナリングするバイクが明らかに横倒しとなっているのにコケない理由を説明したいと思います。
これに関しても同じ内容で動画を配信しているのでリンクを貼っておきます。(内容は全く同じですが、動画の方が遥かに理解しやすいと思います)
バイクというのは、まあ不安定な乗り物です。
そもそも、直立したまま真っ直ぐ走れることが子供のころから不思議でした。バイクが直立できる理由については、この動画をご覧いただくとよくわかると思います。
※直立して走れる理由については、今回の倒してもコケない原理とは別なので混同されないようご注意願います。
<コーナリング中のバイクがコケない理由>
さて、バイクって曲がる時に絶対傾けるじゃないですか。というより傾けないと曲がれないようになっているんですね。その理由、わかりますか?
その理由はバイクにかかる様々な“力”が関係しています。
それを解説します。
めんどくさい計算式などは使いません。
できるだけわかりやすく簡単な言葉で説明していこうと思いますので最後までお付き合いください。
まず、バイクが直進しているときは直立しています。この時、バイクにかかる力を説明します。
まず、バイクとライダーの合計した重量が真っ直ぐ下にかかります。それとまったく同じ力が地面が持ち上げる力です。
「地面が持ち上げる力」というものにピンとこない方もいらっしゃると思いますが、僕たちがこの地球上で生きている以上、常にこの力を受けています。簡単に言うと、固い地面が僕たちの重量に反発して支えていてくれているんですね。
この力が無いと地球上には何も立っていられなくなり、すべてが地中に沈んでしまいます。
重量に対して地面が持ち上げる力が常に同じになることでバイクは地面に沈まないし宙を浮くこともないわけです。
“力”とはこういうもので、二つの力が正反対の方向に同じ強さで作用することでその物体はバランスしています。
<2つ以上の力が方向と強さにおいて互いに打ち消す場合その物体はバランスする>
例えば、とある点にこのような力が加われば・・・
こう動きますよね。
そこで、この点に2つめの力を加えます。
この2つの力は、大きさが等しく方向が逆です。
この場合、点は動きません。
では、このような3つの力をかけるとどうなるでしょう?
はい、これも動きません。
その理由は後ほど説明します。
次に、こうするとどうでしょう?
これは動きますよね。では、どの方向にどれくらい動くかわかりますか?
答えはこうです。
“力”とはおもしろいもので、足し算ができるのです。しかも、強さだけではなく方向も。
その計算方法は、まず2つの力で平行四辺形を作り、その対角線を表すとそれが合計した力となります。
青い線が合計した力です。これを「力の合成」といいます。
この、3つの力を加えている場合も
赤の力と緑の力を合成することで茶色の力となり、これが青の力と反対方向に釣り合っているため点は動かないのです。
さて、力の足し算についてはご理解いただけましたか?
ではこれをバイクのコーナリングに当てはめてみましょう。
<バイクにかかる力>
これはコーナリング中のバイクです。
今、このバイクが“地面にかけている力”を探してみましょう。
一つは重量ですね。
重量は重心から真下にかかる力です。
二つ目は遠心力です。
遠心力は、コーナリング中に外向きに発生する力です。
この2つの力を合成すると・・・
このような青の力となります。
先ほどの図と同じようになりますね。
また、この力はタイヤの接地点に作用しています(重要)。
次に、地面が“バイクにかけている力”はどうでしょうか?
まず1つは地面がバイクを持ち上げる力ですよね。
2つめが
遠心力に反発する力です。
これはタイヤと地面の間で発生する摩擦力であり、タイヤが横滑りしようとするのを支えています。グリップの効くタイヤとはこの摩擦力が強いタイヤのことです。
では、地面がバイクを持ち上げる力と摩擦力を合成します。
このような青の力が生まれます。
ちなみに、この力もタイヤと地面の接地点に作用します。
もうおわかりですね?
青の力同士を比較すると・・・
まったく同じ強さで向きが逆である事がわかります。
バイクが “地面にかけている力” と地面が “バイクにかけている力” が同じ強さで向きが逆なのです。
「2つ以上の力が方向と強さにおいて互いに打ち消す場合その物体はバランスする」
という法則があるため、このバイクは安定しています。
ちなみに、
2つの力は同じ接地点に作用することで互いに打ち消す力となるのですが、これはバイクが傾きながらコーナリングすることで成り立ちます。
もしも、傾けずにコーナリングすると・・・
地面からバイクに対しては
接地点にこういう力が作用しますが・・・
バイクから地面にはこういう力が発生します。
このとき、青の力が作用するのは
ココです。
すなわち、バイクがこの〇の地点まで行こうとするため
こういう悲劇が起こります。
この傾きが必要なんですね。
さて、コーナリングを速くしようとするならば速度を上げるのは当然ですよね。
速度を上げるということは・・・
遠心力も上がるということです。
その結果・・・
合成した力はこうなります。
そしてこうやってコケてしまいます。
コケないためにはどうすればいいのでしょう?
それは・・・
より倒すしかないんですね。
こうすることで力はタイヤと地面の接地点に作用することができます。
ちなみに、低い速度(弱い遠心力)でコーナリングしている時に、必要以上に傾けると
やはりコケてしまいます。
すなわち、コーナリングではその速度(遠心力)に見合う角度で倒さないといけないということです。
<コーナリング時のバイクの角度とは>
さて、こういう状態のバイクで考えますと・・・
ここまで倒すということは、
とてつもない遠心力を受けながら走っているからここまで倒す必要があるわけで、
決して倒しているから速いというわけではないということはもうおわかりですよね。
速くコーナリングするにはバイクを倒さないといけないということはわかりました。
しかし、その角度にも限界があります。
これはバイクのタイヤの絵です。
直進時は垂直状態です。右の3つはコーナリング中のバイクの状態で、速度が上がるとその傾きは大きくなります。
さて、
高速コーナリング中のタイヤの絵を拡大すると、その接地点はタイヤの端ギリギリです。
すなわち、これ以上倒すと・・・
タイヤと地面の摩擦がなくなり(グリップが効かなくなり)スリップしてしまいます。そうでなくてもここまで倒すとバイク本体のどこかが地面に接触します。
つまり、バイクを倒すにしても限界があるのです。
倒す角度に限界があるということは、つまり速度(遠心力)にも限界があるということになるのでしょうか?
<コーナリング速度にも限界があるのか?>
同じ角度でさらに速度を上げる走法があります。
ハングオフ(ハングオン)です。
※「オフ」と「オン」はどちらの言い方でもいいですが、ここでは「オフ」を使います。
ハングオフとは、この画像のようにバイクよりも内側へ体を入れるようにする姿勢です。
お尻もシート上にはなく、体全体がバイクからはみ出す感じです。
まるでバイクにぶら下がるような。
バイクの基本姿勢は、このような「リーンウィズ」というバイクと体が同じ直線上にある姿勢です。
つまり、全体の重心もこの直線上のどこかにあるわけで、バイクにかかる力はこの線に沿ってかかります。
これは、バイク本体だけで見た場合の重心ラインです。
青い線がこのラインを通るので、遠心力はこれが限界でした。↓
ハングオフにするとどうなるでしょうか。
ハングオフはライダーの体を内側に大きくずらすので、重心ラインの角度がこのように変化します。
青い力は重心ラインを通るので
遠心力はこのようになります。
元の重心ラインではこれが遠心力の限界でした。
比較するとこうです。
こうしてバイクの角度による速度の限界を超えているんですね。
<まとめ>
今回の話
をまとめると・・・
「こんなに倒してなぜコケないのか?」というより、
高速でコーナリングすると
「ここまで倒さないとコケてしまう」という方が正しく、
倒す角度にも限界があるから
「重心をずらしてさらに速度を出している」ということです。
※さて、最後に注意事項です。
この原理には「タイヤと路面の摩擦が遠心力に十分耐えうる」という前提が必要です。
市販のタイヤや一般道ではレーサーのような速度、角度で走行しようとしても摩擦力が耐え切れずにスリップしてしまいますので、公道ではマネしないようお願いします。
それでは、今回はこの辺で。